(日本語) 『旅立ち』


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『旅立ち』

シガーロスの曲が流れる。
その世界に、
逃げ込みたくなる。

母に、
シガーロスの思い出を語ろうとする場面を思い浮かべようとするが
踏み止まる。

昔話はもう終わりだ。

実家のある、
地域での思い出は寂しいものばかり。

まるで、
全て捨て去るためにあるかのよう…

捨て去るためのもののように。

あの暖かな世界を知るまでは、
知らなかった。

これまでの思い出は全て、
捨て去って良いものだと。

それに対して後ろめたさも大きな決意も必要ないんだと。

そこにはただ優しさしかない。
暖かさ、温もりしかない。
争いはあるかもしれない。
寂しい気持ちも訪れるかもしれない。

でも幸せだ。

生まれ育った町の、世界の、
その寂しさとは違う。

不本意だ。
居てはいけない。

旅立ちの時。

僕は人々と関わろうとしている。
ジッパーを下ろして開こうとしている。

おおっぴろげている。

暖かい。

この世界は美しいと、
素晴らしいと、
今なら本当に、
あの人たちのように歌える気がする。

言葉が欲しい。
音楽が聴きたい。

今は、
残されたものだけで、
この切なさを埋めようとしている。

それは、
寂しい。

寂しさの正体は分かっている。
これまで何度も問うてきた。

でも問いや分析なんてどうでもいい。

サーフボードを抱えて、
あの暑い陽射しの下で、
眉間にしわを寄せながら、
ムサムサと歩いている方がよっぽど良い。

でも、そこも良いけれど、
今、本当に向かいたい場所は、
そこではない。

旅立ちの時、
今は寂しさを感じる、だろう。
でもそれは思い込みに過ぎない。

(2020.05.12)